『星が綺麗なあの場所で。』




「莉沙!!」




誰かが家の外から大きな声で莉沙を呼んだ。




朝から元気な声で呼ぶのは咲しかいないよね。




案の定、莉沙が部屋の窓から外を覗くと咲が手を振っていた。




「今日暇だったら買い物行かない?」




正直、今日はそんな気分になれない。
優人さんと会えなかったことを思いだしてしまうし…。




すると咲が落ち込む莉沙に気付いたのか、こう切り出した。




「何かあったんでしょ?その顔見れば分かるよー!買い物じゃなくてカラオケ行こっ!」




咲の言葉に莉沙が頷く。




カラオケで二人がしばらく歌っていると莉沙がこう言った




「ちょっとお手洗い行ってくる」




咲が歌いながら手でOKサインを出すと、莉沙はトイレに向かう。




莉沙がトイレを済ませ、咲のところに戻ろうとすると、向こうから一人の男の子が歩いてきた。




「え…?」




歩いてトイレに向かって来ている男の子が、莉沙には見慣れてて忘れられない、約束も守ってくれないような優人にしか見えなかった。





「優人…さん…?」




だが、その男の子はすれ違いざまに莉沙を見ることもなく淡々とトイレに入って行った。




莉沙は少し固まり呆然と立ち尽くした。




固まっている莉沙に咲が呼びかける。




「莉沙!トイレの前でボーっとしてどうしたの?莉沙が遅いから様子見に来たんだよ?」




咲が心配そうな表情で莉沙に尋ねる。




「だ、大丈夫だよ!ちょっと知り合いに似た人を見つけちゃって」




莉沙が無理をして笑っていることに咲はすぐに気付く。




「莉沙っ!今日はもう帰ろっか!!」




二人がカラオケを終え帰っている途中、またしても優人に似た人を莉沙が見つけてしまう。




「ごめん咲。 私、用事思い出したから先に帰ってて?」




咲は少し戸惑った様子を見せながらも、何かを察したのか静かに帰って行った。




莉沙はその後直ぐに優人に似た人の元へ走って向かった。




全速力でその人を追いかけている莉沙は、今にも泣き出してしまいそうだ。




「あ、あの!」




莉沙は街を歩く人達に目もくれず、勇気を出して大きな声で男の子に呼びかけた。




振り向いた男の子が暫く莉沙を見つめた。




やっぱりどこからどう見ても、優人さんだよ…



少し間が空いてから男の子が口を開く






「莉沙ちゃんだよね、久しぶり」







莉沙の思った通り、男の子は優人だった。




だが、優人の莉沙への返事はあまりにも心がこもってなく冷たいものだった。





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