【仮面の騎士王】
四頭立ての馬車が屋敷の玄関に停まると、その気配を感じた門番や家令、数名の侍女たちが、大急いきで集まった。その一番後ろから、飛び出すように現れたのはケイトリンだ。


「お父様、おかえりなさいませ」


 ケイトリンはロッソに駆け寄った。


「ケイトリンか。今、戻った。珍しいな、こんな時刻まで起きていたのか」


 ロッソは、久しぶりに娘と顔を会わせて口元をほころばせた。仕事が忙しく、ケイトリンが起きている時間に帰宅するのは久しぶりのことだ。もっとも、彼が言うところの仕事の半分は、酒を飲んだり、博打にふけったり、女と寝ることではあったが。


「私、お父様にお話したいことがあって」


「話? しかし、もう遅い。明日でもよいだろう」


「いえ、どうしても今聞いていただきたいのです」


 ケイトリンのすがるような瞳を見て、ロッソは口元に蓄えたひげを撫でた。世間ではやり手と恐れられるロッソだが、亡き妻の忘れ形見であるケイトリンには甘い父親だった。


「わかったよ。では、私の部屋で」


 私室に入ると、ロッソは人払いをして、ケイトリンと並んで椅子に座った。


「それで、話というのは?」


 ケイトリンは、ごくりと唾をのみ込んだ。話す内容の順序やどう説明するかなど、さんざん考えていたはずなのに、ロッソを目の前にして出てきたのはたった一言だった。


「お父様は、ランベール王の死に関わりがあるのですか?」

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