【仮面の騎士王】
まるでレイフが泣いているように見えて、ケイトリンは耐え切れず、次の質問を投げかけた。
「あの、レイフ様は兄のことを何かご存知ですか?」
「ギースのこと?」
そこで初めて、レイフは左腕を額にずらした。顔をケイトリンに向けた拍子に、彼の前髪がさらりと揺れる。その間から覗くレイフの瞳に見つめられて、ケイトリンの心臓がドクンと音を立てた。
「私、父にランベール王の死に関わりがあるのかと聞いたのです。すると、父は兄が私に嘘を吹き込んだと言って、私をここへ連れて来たのです。当分誰にも会わせないと」
「そうか」
レイフは、再び天井に視線をやる。
(それで、ギースが繋がれたわけか)
もともとレイフがこの屋敷に来たのは、ギースに用があったからだ。部屋に軟禁されたケイトリンと違い、ギースは部屋の中で後ろ手に縛られ床に転がされていた。裂けた衣と体の傷は鞭打たれたことを顕著に物語っていた。
ギースに頼まれた通り、いや、頼まれなくてもそうしただろうが、レイフはギースのことは黙っていた。
「なぜ父がそんなことを言うのかわかりません。でも、父の怒りが兄に向いてしまったのは間違いないと思います。私、兄が心配で」
「ギースのことなら、大丈夫だ」
「本当ですか?」
「本当だ」
「良かった。レイフ様の言葉なら、信じられます」
「盗賊の言葉など、そんなに簡単に信じるもんじゃない」
「あの、レイフ様は兄のことを何かご存知ですか?」
「ギースのこと?」
そこで初めて、レイフは左腕を額にずらした。顔をケイトリンに向けた拍子に、彼の前髪がさらりと揺れる。その間から覗くレイフの瞳に見つめられて、ケイトリンの心臓がドクンと音を立てた。
「私、父にランベール王の死に関わりがあるのかと聞いたのです。すると、父は兄が私に嘘を吹き込んだと言って、私をここへ連れて来たのです。当分誰にも会わせないと」
「そうか」
レイフは、再び天井に視線をやる。
(それで、ギースが繋がれたわけか)
もともとレイフがこの屋敷に来たのは、ギースに用があったからだ。部屋に軟禁されたケイトリンと違い、ギースは部屋の中で後ろ手に縛られ床に転がされていた。裂けた衣と体の傷は鞭打たれたことを顕著に物語っていた。
ギースに頼まれた通り、いや、頼まれなくてもそうしただろうが、レイフはギースのことは黙っていた。
「なぜ父がそんなことを言うのかわかりません。でも、父の怒りが兄に向いてしまったのは間違いないと思います。私、兄が心配で」
「ギースのことなら、大丈夫だ」
「本当ですか?」
「本当だ」
「良かった。レイフ様の言葉なら、信じられます」
「盗賊の言葉など、そんなに簡単に信じるもんじゃない」