【仮面の騎士王】
寝台に肘をついて紡ぐ言葉は、戒めを含んでいたが、優しい声音だった。
(笑っていらっしゃる?)
暖かな眼差しを向けられて、ケイトリンは、慌てて視線をそらした。
「そういえば、レイフ様は、どうやってこの部屋に入ったのですか? 入口には見張りがいるはずです」
マノンでさえ部屋に入れることを許さなかったロッソに忠実な従者が、一目見て仮面の盗賊だと分かる格好のレイフをすんなり部屋に通すわけがなかった。
「あぁ。俺は今、ギースということになっているんだ」
「お兄様?」
「こうやって顔を隠してね」
ギースは頭から黒衣をかぶる。瞳の色が違ってはいたが、確かに、ふたりの背格好は似ていなくもない。さらに地下室は極端に明かりが少なく、薄暗かったのが幸いしたのだろう。ケイトリンから見れば、たとえ後ろ姿でも別人だとわかるが、もともとギースは屋敷の人間との接触もあまり持たなかったため、まともに顔を知っている者が少ない。
「あとは、通してくださいとお願いしたのさ」
そう言ってレイフは襤褸布を見せた。そこには、ギースの文字で『どうしても妹に会いたい。すぐに済むので通して』と書かれていた。
(笑っていらっしゃる?)
暖かな眼差しを向けられて、ケイトリンは、慌てて視線をそらした。
「そういえば、レイフ様は、どうやってこの部屋に入ったのですか? 入口には見張りがいるはずです」
マノンでさえ部屋に入れることを許さなかったロッソに忠実な従者が、一目見て仮面の盗賊だと分かる格好のレイフをすんなり部屋に通すわけがなかった。
「あぁ。俺は今、ギースということになっているんだ」
「お兄様?」
「こうやって顔を隠してね」
ギースは頭から黒衣をかぶる。瞳の色が違ってはいたが、確かに、ふたりの背格好は似ていなくもない。さらに地下室は極端に明かりが少なく、薄暗かったのが幸いしたのだろう。ケイトリンから見れば、たとえ後ろ姿でも別人だとわかるが、もともとギースは屋敷の人間との接触もあまり持たなかったため、まともに顔を知っている者が少ない。
「あとは、通してくださいとお願いしたのさ」
そう言ってレイフは襤褸布を見せた。そこには、ギースの文字で『どうしても妹に会いたい。すぐに済むので通して』と書かれていた。