【仮面の騎士王】
「レイフはあまり楽しくなさそうだね。でもさ、やはり盗賊は現れないかもしれないね」


「まあ、これだけの軍勢が警備をしていれば、普通の神経の持ち主なら恐れをなして近寄れないだろうさ」


 軽騎兵とマスケット兵が屋敷の周りをぐるりと取り囲み、一部の隙もない。特にマスケット銃の製造本数は限られており、それを扱うことのできるマスケット兵を配置したことで、この屋敷は要塞なみの警備だった。指揮者としても優れている、とレイフはファビアンを評価した。


「そうじゃなくてさ。登場したくても、登場できないんじゃないかと思ってさ」


 ファビアンは、急に立ち上がると、座っているレイフの後ろに立った。以前にも似たようなことがあった、とレイフは思った。どうやら、背後をとることで自分の優位を感じたいらしい。


「だってさ、同じ場所に2人同時に表れるなんて、無理でしょ?」


「ファビアン王子。それは、どういう意味でございますか?」


 レイフの代わりに会話を遮ったのは、ロッソだった。


「あはは。なんでもないよ。それより早くケイトリンを連れてきてよ。彼女にもこの冠を見て欲しいんだ」


「い、いえ。ここにいるのは危険なので、今から知り合いの家に預けようかと思い、準備をしております」


ロッソは軽く咳払いをして再びワインを流し込んだ。


(嘘だな)


 レイフは、ケイトリンがまだ地下の部屋に閉じ込められているのだと察し、すぐに救い出せない自分の頭をかち割りたい衝動に駆られた。



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