【仮面の騎士王】
柔和な笑顔で、ファビアンはケイトリンの肩を優しく抱きよせる。


「仕留めるって、捕えるのでしょう?」


 ファビアンの考えは、ケイトリンの理解とは微妙なずれがありそうだった。嫌な予感がして、ケイトリンはファビアンの言葉を言い直した。


「できるならね。でも、かなりの剣の達人だっていうし、今回は銃の扱えるものを連れて来たんだ。撃たれたら、どうなるかわからないな」


「そんな!」


 ケイトリンは血の気が引いた。銃というのが、最近新しく発明された武器で、弓矢などより殺傷能力が高いということをケイトリンは知っていた。国庫について勉強したときに、税金の多くを投入して輸入していたことを学んだからだ。


 ファビアンは、本気で仮面の盗賊を殺すつもりなのだ。ケイトリンはレイフと初めて会ったときに彼が血まみれだったことを思い出して、死神に心臓を鷲掴みにされたかのように蒼白になった。


「どちらにしろ、縛り首は免れないだろうから、今日死んでしまう方が本人にとっても楽なんじゃないかな。レイフはどう思う?」


 レイフの名前がファビアンの口から出たことで、ケイトリンはわずかに気を取り直した。今日のレイフは、捕える側の人間としてこの場にいるのだ。つまり、仮面の盗賊として殺されることはない。


 というより、そもそもレイフがこの場にいる以上、盗賊が現れるはずはないのだ。ケイトリンが自分にそう言い聞かせ、わずかに安堵した時、兵士たちの声があたりに響いた。


「出たぞ! 仮面の盗賊だ!!」

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