【仮面の騎士王】
「なるほど。ということは、ここで待った方が良いというわけですな」


 ロッソは、顎髭に手をやると、「さすが、お見事です」と繰り返した。


「というわけだから、君にもここにいてもらうよ、レイフ」

 
 ファビアンは、レイフを椅子に座らせようと、肩をつかんだ手にさらに力を入れた。


「ならば、君はここにいればいいだろう。私はやつを捕まえる」


 レイフは、自分の肩におかれたファビアンの手首をつかみ返し、外側にひねる。


「いや、君にはここにいてもらう。君がいなくなれば、仮面の盗賊の数が増える可能性もあるしね」


 レイフは、無言でファビアンを睨みつけたあと、静かに椅子に座りなおした。


 外から聞こえる声は、屋敷の表、裏と移動している。馬を使っているせいか、かなり広範囲を移動しているようだ。


「なんだか、いらいらしているね」


 レイフが小刻みに足を揺らしているのを、ファビアンは楽しそうに指摘した。


「計画が狂っちゃった?」


 ファビアンは赤いワインの入ったグラスをゆっくりと回し、レイフの方へ差し出す。


「それはそうとも。王から討伐隊の指揮を命じられたのは私のはずなのに、まるでお前が指揮者のようだからな」


「ふーん。それだけ?」


「他に何かあるのか」

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