【仮面の騎士王】
ケイトリンは、二人の様子を盗み見た。静かだが、火花が散っているように思える。


(もしや、ファビアン様は、仮面の盗賊の正体に気付いているのかしら)


 ケイトリンは、自分の考えが外れていることを祈らずにはいられなかった。たとえどんな理由があろうとも、ファビアンが盗賊を許すとは思えない。


 報告を終えた兵士は、ふたりのやり取りが終わっても、自分に命令が下されないので、おずおずと申し出た。


「あの、銃の使用許可は、どうなさいますか?」


 レイフは答えない。


「ほら、兵士が許可を求めているよ?」


 ファビアンは、にやにやしながら、兵士にではなくレイフに言葉をかけた。


「お前が命じるんじゃないのか」


「まさか。指揮官は、君だもの。僕は、助言するだけだよ」


 レイフは、ため息をつき、兵士と目を合わせた。


「銃の使用は許可する。ただし、決して室内で発砲するな。それから、賊以外の人間に銃を向けることは許さない」


「はっ!」


 退出しようと歩き出した兵士の横顔を見て、ケイトリンは既視感を覚えた。


(どこかで会ったかしら)


 記憶の引き出しから探り当てようとしたが、扉の外で上がった悲鳴に邪魔をされた。
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