【仮面の騎士王】
「下がっていろ」
レイフは素早く立ち上がり、剣を抜いた。蝋燭に照らされて諸刃があやしく光る。
甲高い声。間違いなく女性の声だ、とケイトリンは思った。短い悲鳴は一瞬で、あたりはしんと静まり返った。兵士たちの走り回る音も、銃声もしない。
何か様子がおかしい。皆がそう感じるのに十分な静けさだった。全員が、扉を見つめる。
「僕の後ろへ。ケイトリン」
ファビアンは、ケイトリンを自分の背後に匿うようにして、両手で剣を構えた。
「ケイトリン、もっと下がりなさい」
ロッソがふらつきながら立ち上がると、彼の座っていた椅子が派手に音を立てて後ろに倒れた。ケイトリンは、ロッソが倒れるのではないかと思い、慌てて彼の後ろに回り、身体を支える。ファビアンはふたりを振り返ったが、レイフは横目でちらりと見ただけで、扉の方へ歩みを進めた。
「開くぞ」
そう低くつぶやいて、レイフが扉に手をかけた、その時。
入口とは全く反対の方角、彼らの背後にある露台へと続く扉が勢いよく開いた。外からの風が勢いよく舞い込むと、部屋の中の半分の蝋燭が勢いを失って揺れ動いた。もう半分の蝋燭は、すでに煙を吐いている。
室内が急に暗くなったが、それでもそこに立っているのが誰であるか、説明するまでもなかった。
黒い影は、あっという間にいちばん近いところに立っていたケイトリンの背後を捕えた。
「き、貴様!」
ファビアンは怒りの表情で向きを変える。
「おっと、動くなよ。このかわいいお嬢様の顔に傷がつくぞ」
(どういうこと? 仮面の盗賊は、レイフ様ではないの?)
ケイトリンは目の前で黒光る剣を直視できず、思わず瞳を閉じた。
レイフは素早く立ち上がり、剣を抜いた。蝋燭に照らされて諸刃があやしく光る。
甲高い声。間違いなく女性の声だ、とケイトリンは思った。短い悲鳴は一瞬で、あたりはしんと静まり返った。兵士たちの走り回る音も、銃声もしない。
何か様子がおかしい。皆がそう感じるのに十分な静けさだった。全員が、扉を見つめる。
「僕の後ろへ。ケイトリン」
ファビアンは、ケイトリンを自分の背後に匿うようにして、両手で剣を構えた。
「ケイトリン、もっと下がりなさい」
ロッソがふらつきながら立ち上がると、彼の座っていた椅子が派手に音を立てて後ろに倒れた。ケイトリンは、ロッソが倒れるのではないかと思い、慌てて彼の後ろに回り、身体を支える。ファビアンはふたりを振り返ったが、レイフは横目でちらりと見ただけで、扉の方へ歩みを進めた。
「開くぞ」
そう低くつぶやいて、レイフが扉に手をかけた、その時。
入口とは全く反対の方角、彼らの背後にある露台へと続く扉が勢いよく開いた。外からの風が勢いよく舞い込むと、部屋の中の半分の蝋燭が勢いを失って揺れ動いた。もう半分の蝋燭は、すでに煙を吐いている。
室内が急に暗くなったが、それでもそこに立っているのが誰であるか、説明するまでもなかった。
黒い影は、あっという間にいちばん近いところに立っていたケイトリンの背後を捕えた。
「き、貴様!」
ファビアンは怒りの表情で向きを変える。
「おっと、動くなよ。このかわいいお嬢様の顔に傷がつくぞ」
(どういうこと? 仮面の盗賊は、レイフ様ではないの?)
ケイトリンは目の前で黒光る剣を直視できず、思わず瞳を閉じた。