【仮面の騎士王】
「ま、待て盗賊! 娘に手を出すな! 欲しいものは何でもやる。だから、ケイトリンに傷をつけるな!」
ロッソはケイトリンに手をのばす。
黒装束の男は、ケイトリンの腹に手を回し、ロッソとの距離をとった。
「動くなと言ったろう。だが、なんでもというなら、お前の命をいただこうか」
「そ、そんなことができるか!」
「そうか。娘のためになら自分の命を投げ出すんじゃないのか?」
男が鼻で笑うと、むき出しになっている唇の口角がこれでもかというくらいに持ち上がった。
(この声、初めて聞く声だわ。レイフ様ではない。どういうことなの?)
素顔を確かめようと、ケイトリンは、顔を斜め後ろに傾けて男の顔を見上げた。黒い仮面をつけて、黒い帽子を目深にかぶっている。その黒装束は、確かにいつも仮面の盗賊が身につけていたものとそっくりだ。
だが、その隙間から覗いているのは、紫ではなく青い瞳だった。そして、その口元は仮面の盗賊のそれとは違っていた。ケイトリンは、その唇に見覚えがあった。言葉を読み取るために、見慣れたその形。
まさか、とケイトリンは思った。信じられない思いで男の瞳を凝視すると、気付いた男と視線が交差した。
彼の揺らいだ瞳は唇以上に雄弁だった。「しまった、ばれたな」きっとそう言っているに違いないとケイトリンは感じた。そこで、ケイトリンは、少し前に銃の使用許可を求めてきた兵士が誰なのか、確信した。あの兵士も、この仮面の盗賊も同一人物だ。
ロッソはケイトリンに手をのばす。
黒装束の男は、ケイトリンの腹に手を回し、ロッソとの距離をとった。
「動くなと言ったろう。だが、なんでもというなら、お前の命をいただこうか」
「そ、そんなことができるか!」
「そうか。娘のためになら自分の命を投げ出すんじゃないのか?」
男が鼻で笑うと、むき出しになっている唇の口角がこれでもかというくらいに持ち上がった。
(この声、初めて聞く声だわ。レイフ様ではない。どういうことなの?)
素顔を確かめようと、ケイトリンは、顔を斜め後ろに傾けて男の顔を見上げた。黒い仮面をつけて、黒い帽子を目深にかぶっている。その黒装束は、確かにいつも仮面の盗賊が身につけていたものとそっくりだ。
だが、その隙間から覗いているのは、紫ではなく青い瞳だった。そして、その口元は仮面の盗賊のそれとは違っていた。ケイトリンは、その唇に見覚えがあった。言葉を読み取るために、見慣れたその形。
まさか、とケイトリンは思った。信じられない思いで男の瞳を凝視すると、気付いた男と視線が交差した。
彼の揺らいだ瞳は唇以上に雄弁だった。「しまった、ばれたな」きっとそう言っているに違いないとケイトリンは感じた。そこで、ケイトリンは、少し前に銃の使用許可を求めてきた兵士が誰なのか、確信した。あの兵士も、この仮面の盗賊も同一人物だ。