【仮面の騎士王】
そんなふたりのやりとりにも気づかず、自分の命が惜しいのか、ロッソは押し黙った。
代わりにファビアンが、剣を構えたまま男に近付く。
「ふざけたことを! 貴様のような低俗な輩にやるものなどない。とっととケイトリンを離せ、この卑怯者が」
ファビアンが進んだ分だけ、男は退いた。もちろん、ケイトリンの体を引き連れて。ケイトリンは、抵抗せずふらつきながら後ろ向きに歩く。
「待て、ファビアン」
レイフは盗賊から一番遠い位置で、ファビアンを声で制止しようとした。しかし、ファビアンはレイフの忠告を無視して、駆けだした。
「うおおおお!」
ケイトリンなど目に入っていないのか、ファビアンは剣を突き出した。
耳元で風の切る音がする。それが、剣を向けられた音だと気付いた時、ケイトリンの身体は黒い手袋をした男の掌によって露台の方へ押しやられていた。
ファビアンの剣の鍔は拳を覆う形をしている。それは、拳を守るためだけでなく、直接相手を殴る用途もあった。ファビアンは、お手本のように剣を突き出した後、そのまま角度を変えて鍔で男の顔面を殴ろうとした。
男はすんででその拳を避けると、反対の掌でつかみ、すかさず自分の剣を突き出した。今度は、ファビアンが男の剣を避け、同じように拳をつかんだ。どちらも力を込めたまま激しくにらみ合った。
「お前、自分の婚約者がどうなってもいいのか」
「ふん。女なんて山のようにいるさ。婚約者が不幸な事故で死ぬなら、他国から妃を迎えても誰も文句は言わないだろうよ」
代わりにファビアンが、剣を構えたまま男に近付く。
「ふざけたことを! 貴様のような低俗な輩にやるものなどない。とっととケイトリンを離せ、この卑怯者が」
ファビアンが進んだ分だけ、男は退いた。もちろん、ケイトリンの体を引き連れて。ケイトリンは、抵抗せずふらつきながら後ろ向きに歩く。
「待て、ファビアン」
レイフは盗賊から一番遠い位置で、ファビアンを声で制止しようとした。しかし、ファビアンはレイフの忠告を無視して、駆けだした。
「うおおおお!」
ケイトリンなど目に入っていないのか、ファビアンは剣を突き出した。
耳元で風の切る音がする。それが、剣を向けられた音だと気付いた時、ケイトリンの身体は黒い手袋をした男の掌によって露台の方へ押しやられていた。
ファビアンの剣の鍔は拳を覆う形をしている。それは、拳を守るためだけでなく、直接相手を殴る用途もあった。ファビアンは、お手本のように剣を突き出した後、そのまま角度を変えて鍔で男の顔面を殴ろうとした。
男はすんででその拳を避けると、反対の掌でつかみ、すかさず自分の剣を突き出した。今度は、ファビアンが男の剣を避け、同じように拳をつかんだ。どちらも力を込めたまま激しくにらみ合った。
「お前、自分の婚約者がどうなってもいいのか」
「ふん。女なんて山のようにいるさ。婚約者が不幸な事故で死ぬなら、他国から妃を迎えても誰も文句は言わないだろうよ」