【仮面の騎士王】
「それが本音か!」
男は、怒りに震える掌を握りしめ、ファビアンの拳を剣ごと斜め下に引く。体重を乗せて力を入れていたファビアンの身体が前のめりになると同時に、彼の腹を膝で蹴りあげた。
「うっ」とうめいてファビアンの身体が床に沈む。ついでとばかりに、男は剣の鍔もとでファビアンの首筋に一撃を落とした。
その一瞬のすきをついて、男はケイトリンの腕をとると、露台の端まで来て縄に手をかけた。露台の柵から地面まで一直線にぶら下がっている。
男はケイトリンの腰を支えると、「しっかりつかまって」と囁いた。何をするかが分かってケイトリンは言われるがまま男の体にしがみついた。
悲鳴を上げる暇もなく、そのままケイトリンの身体は男と一緒に一気に地面まで滑り落ちる。革の手袋をしていなければ、男の手は傷だらけになっていたに違いない。
足が地面に着いたところで、ケイトリンは男の仮面をはぎ取った。厳しい表情などついぞ見たことはないが、見間違えるはずもない。
「やっぱり、お兄様。いったいどういうことなのです?」
「話は後だ。とにかく、今はここから逃げるんだ」
左手でスカートの裾をたくし上げると、ケイトリンはギースに手を引かれて、月明かりを頼りに暗い道を走り出した。
男は、怒りに震える掌を握りしめ、ファビアンの拳を剣ごと斜め下に引く。体重を乗せて力を入れていたファビアンの身体が前のめりになると同時に、彼の腹を膝で蹴りあげた。
「うっ」とうめいてファビアンの身体が床に沈む。ついでとばかりに、男は剣の鍔もとでファビアンの首筋に一撃を落とした。
その一瞬のすきをついて、男はケイトリンの腕をとると、露台の端まで来て縄に手をかけた。露台の柵から地面まで一直線にぶら下がっている。
男はケイトリンの腰を支えると、「しっかりつかまって」と囁いた。何をするかが分かってケイトリンは言われるがまま男の体にしがみついた。
悲鳴を上げる暇もなく、そのままケイトリンの身体は男と一緒に一気に地面まで滑り落ちる。革の手袋をしていなければ、男の手は傷だらけになっていたに違いない。
足が地面に着いたところで、ケイトリンは男の仮面をはぎ取った。厳しい表情などついぞ見たことはないが、見間違えるはずもない。
「やっぱり、お兄様。いったいどういうことなのです?」
「話は後だ。とにかく、今はここから逃げるんだ」
左手でスカートの裾をたくし上げると、ケイトリンはギースに手を引かれて、月明かりを頼りに暗い道を走り出した。