【仮面の騎士王】
 もともと細身ではあったが、実際、レイフが最後に会った時よりも、ケイトリンはさらに痩せていた。


「そうじゃなくてね」


 ファビアンは小さな声でもごもごと口ごもった。いらいらして、不機嫌になった時の癖だ。


「彼女が処女なのか、ってことさ!」


 ファビアンは、握ったケイトリンの手に力を込める。ケイトリンが顔を背けると同時に、レイフは顔をしかめた。


「どういう意味だ?」


「考えてもごらんよ。あの盗賊にさらわれていたんだよ。彼女は若く、美しい。なのに、なにもされていないと思うかい?」


 ああ、と吐き捨てるようにつぶやくと、レイフはファビアンの真向かいに深く腰掛けた。背もたれに体重を乗せ、小さなテーブルの上に足を投げ出した。


「彼女は否定している。だが、君は信じていない。そんなところか。だがそれは、婚礼の時におのずとわかることじゃないのか」


「わかってからじゃ、遅いんだよ。僕が馬鹿にされたことになる」


「盗賊の子供を孕んでいるかもしれないと心配なのか?」


「あぁ、それなら大丈夫。月のものが来ているのは確認済みだ」


 ケイトリンの横顔が強張る。


「それで、一体私にどうしろというんだ? まさか、彼女が処女か確認してほしいわけでもないだろう」


 ファビアンは、その問いを待っていましたとばかりに、白い歯を見せた。


「君に証人になってほしいのさ」


「証人?」


「そうさ。彼女が僕に嘘をついていない。僕を愛してるってことのね」
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