【仮面の騎士王】
張りつめた空気に我慢できず、ケイトリンは声をあげた。
「もうおやめください。ファビアン様。酔っていらっしゃるのですね。部屋へ戻りましょう」
ケイトリンはファビアンの肘に腕をくぐらせ、立ち上がるよう促す。
しかし、ファビアンは身じろぎもせず、逆にケイトリンの肩を抱き寄せた。ケイトリンの小さな体は、ファビアンの膝の上にすっぽりと収まり、ファビアンの膝の上に横抱きにされる形になってしまった。
立ち上がる間もなくファビアンの顔が近づいてくる。何をされるかわかったケイトリンは、掌を彼の顎に当てて抗った。
「恥ずかしがる必要はないさ。僕らは夫婦になるんだからね」
「そうではありません。こんな場所で、私にもレイフ様にも、あまりに非礼です」
ファビアンは、ケイトリンの耳朶に唇を這わせると、小さく囁いた。
「疑ってもいいのかい? 僕は処女でなければ妻に娶るつもりはないよ。結婚を取りやめたら君のお父さんがどう思うかな」
ケイトリンの抵抗がわずかに緩んだのをファビアンは見逃さなった。彼女の手首をつかむと反対の手を腰に回し体を密着させる。無遠慮に唇を押し付けると、そのまま口内をなめまわした。
酒の匂いがケイトリンの鼻をつく。いつだったか、街で若い男に襲われたことを思い出して、ケイトリンは悪寒を覚えた。今すぐこの場から逃げたい気持ちに駆られる。それでも彼女は石のように身動きせず耐えた。
そうすることが、レイフのためだと、自分自身に言い聞かせて。
「もうおやめください。ファビアン様。酔っていらっしゃるのですね。部屋へ戻りましょう」
ケイトリンはファビアンの肘に腕をくぐらせ、立ち上がるよう促す。
しかし、ファビアンは身じろぎもせず、逆にケイトリンの肩を抱き寄せた。ケイトリンの小さな体は、ファビアンの膝の上にすっぽりと収まり、ファビアンの膝の上に横抱きにされる形になってしまった。
立ち上がる間もなくファビアンの顔が近づいてくる。何をされるかわかったケイトリンは、掌を彼の顎に当てて抗った。
「恥ずかしがる必要はないさ。僕らは夫婦になるんだからね」
「そうではありません。こんな場所で、私にもレイフ様にも、あまりに非礼です」
ファビアンは、ケイトリンの耳朶に唇を這わせると、小さく囁いた。
「疑ってもいいのかい? 僕は処女でなければ妻に娶るつもりはないよ。結婚を取りやめたら君のお父さんがどう思うかな」
ケイトリンの抵抗がわずかに緩んだのをファビアンは見逃さなった。彼女の手首をつかむと反対の手を腰に回し体を密着させる。無遠慮に唇を押し付けると、そのまま口内をなめまわした。
酒の匂いがケイトリンの鼻をつく。いつだったか、街で若い男に襲われたことを思い出して、ケイトリンは悪寒を覚えた。今すぐこの場から逃げたい気持ちに駆られる。それでも彼女は石のように身動きせず耐えた。
そうすることが、レイフのためだと、自分自身に言い聞かせて。