【仮面の騎士王】
ケイトリンは、レイフの体に触れようとして、一瞬躊躇した。それは、怪我を直視したことで、ためらいが生じたせいではなかった。


高い背に広い肩幅。引き締まった体躯。父とも兄とも違う男性のもの。


『俺の肌に触れたい?』


レイフの声が耳にこだまする。


(落ち着いて、ケイトリン。私は怪我の手当てをするのだから)


ケイトリンは胸の鼓動を押さえようと深呼吸してから、お湯に浸した布でレイフの体に付いた血を拭きとった。レイフの脇腹に中指2本分ほどの長さの傷口が露わになる。


「思ったほど深い傷ではなさそうだわ。きっと雨のせいで、出血が多いように見えたのね。これなら、縫わなくても止血して薬草を貼っておけば大丈夫じゃないかしら。マノン?」


 ケイトリンの後ろからレイフの傷を覗いていたマノンは、それにこたえるように頷いた。


「本当でございますね。お酒で消毒して軟膏を塗っておきましょう」


「マノン特製の軟膏ね」


「ケイト様。申し訳ないのですが、この男に着せるものをギース様からお借りできないでしょうか? 私は軟膏とお酒を取りに行ってまいります」


「わかったわ。お兄様の部屋へ行ってお借りしてくるわね」


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