【仮面の騎士王】
マノンが新しい布をケイトリンに手渡す。布の中心にはテレピン油から作った軟膏が塗られている。


「これで、あとは包帯をきつく巻いておけば、止血できるわよね」


 傷口を布で覆うと、ケイトリンはマノンを振り返った。


「大丈夫でございましょう。止血の効果もある軟膏ですから」


 マノンの言葉にケイトリンは、ほっと胸をなでおろした。それとほぼ同時に、レイフは上半身を起こした。


「感謝はしないと言ったが、礼は言っておく。助かった。それでは、俺は行く」


 脇腹を押さえて立ち上がろうとするレイフの両肩を、ケイトリンが慌てて押さえた。


「何をおっしゃっているの。今動くなんて無茶です。縫わずにすんだといっても、ひどい傷なんですよ。まだ血も止まっていないのに」


 ケイトリンの澄んだ瞳を見て、レイフは眉間にしわを刻む。


「いや、長居は無用だ。包帯は自分で巻ける。包帯を巻けば止血できるんだろう?」


「わかりました。では、お茶を1杯だけ」


「なんだと?」


「お茶を1杯だけ、飲んでください。そしたら出て行ってかまいません」



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