【仮面の騎士王】


***


部屋の中にほんのりと薄明かりがさして、レイフの瞼を照らした。草花の模様が編み込まれた美しいブロケードが窓際を飾っている。違和感を覚えて寝返りを打とうとした途端、左脇腹に強烈な痛みを感じて、レイフは「うっ」とうなった。


どうやら眠ってしまっていたらしいと気付き、自分が矢傷を負ったことを思い出す。と、同時に、視界の端に美しい金色の長い髪が飛び込んで、ぎょっとした。


床に座ったまま寝台にうつぶせになり眠っているのは、ケイトリンだった。


レイフは、はっとして自分の顔に手をやる。どうやら目もとを覆っていた仮面は外されてはいないようだった。
レイフは、ケイトリンの長い髪に手をのばす。柔らかな髪の毛から、清潔な香りがした。


「う、ううん」


ケイトリンの長いまつげが揺れたかと思うと、瞼がゆっくりと持ち上がった。


「一晩中、俺を看病していたのか・・」


 すぐ耳元でした男性の声に、ケイトリンは、はっとして頭を上げた。すぐ目の前で、真っ黒な仮面の奥から、紫の瞳が自分を見つめている。


(紫水晶のよう。この方、こんな瞳をしていたのだわ)


 暗がりで、はっきりと顔を見ていなかった。なにより傷の手当てをすることに集中していて、どんな顔をしているのか気に留める余裕がなかった。



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