【仮面の騎士王】
「あんた、そのガキに宝石を取られたのかい?」


「多分、ですけど」


「多分?」


「いつ取られたのか、わからなくて」


「ガキがぶつかってきて、泣いたんじゃないかい?」


「え? どうしてわかるのですか?」


「ガキの目線に合わせようとして、かがんじまったんだろ?」


「ええ、その通りです!」


 男は、小ばかにしたように鼻で笑うと、わずかに残る酒の滴を口に放り込もうと、上を向いて酒瓶を振った。


「他にグルのガキがいて、後ろから盗られたのさ。この辺りじゃ有名なガキどもだ」


「あの、その子たちがどこにいるか、ご存じなのですか?」


「だから、ついて来いって言ってんだろ」


 ケイトリンは迷った挙句、男の後について行くことにした。火事で亡くなったせいで、大半のものは焼け落ち、母の形見はあのペンダント一つしかなかった。


 男はふらふらと全身が左右に揺れていたが、道を知っているのは本当らしく、少しも迷うことなく複雑に道の角を折れて進んでいく。


 ケイトリンはそんな男の背中に向けて、気になっていることを尋ねた。


「有名な子どもというのは、泥棒で有名ということですか?」


「当たり前じゃないか。連中は親に捨てられたガキどもだからな。まぁ、盗みでもしなきゃ、生きていけないわな」


 男はへへへと笑い、酒瓶を傾けたが、中身が空だと知って「くそっ!」と声を上げた。同時に酒瓶が床にたたきつけられる。


「よう、お嬢さんよ。食っていけないのは、連中だけじゃなくて俺もなんだ。ガキどもには宝石を恵んでやったんだろう? 俺にも何か分けてくれよ」


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