【仮面の騎士王】
ケイトリンが心の中で恐怖に震える叫び声を上げた時、ジャリ、と地面を踏む足音が聞こえた。
「貴様、何をしている」
低い声と同時に、ケイトリンに覆いかぶさっていた男の身体が、突然宙を舞った。男は「うわっ!」という叫び声とともに地面を転がり、一目散にその場を去った。
「大丈夫か」
ケイトリンがそっと目を開くと、見たことのある紫の瞳が、自分を覗き込んでいた。わけがわからず差し出された手を掴んで立ち上がる。
「レイフ様。どうしてこんなところに」
レイフは全身が黒っぽい服装であるという点では、舞踏会の時とそう変わらなかったが、つばのある帽子を目深にかぶり、質の悪そうな外套を羽織っている。どう贔屓目に見ても王子には見えない。おまけに、つり上がった眼でケイトリンを睨みつけた。
「それは、私の台詞だ! こんなところで何をしている!」
「何をって、私は、今日兄と買い物に来たんです」
「その兄はどこにいる」
「えっと、途中ではぐれてしまって」
レイフがどうしてこんなに怒っているのか、ケイトリンにはわからなかった。細かい説明をすれば納得してくれるだろうと思うのだが、その機会を与えられる前に、レイフは怒りの矛先をギースに向けた。
「はぐれただと!? ギースのやつは何を考えているんだ。妹をこんな危険な目に遭わせて」
妹を守る騎士だとギースがレイフに宣言したのは、ついこの間のことだ。
「兄は悪くありません。私が勝手に来たんです」
「勝手に? まったく、あなたもあなただ。ここが、ミルド国一の貧民街だとわかっているのか! 私が見つけなければ、今頃どうなっていたか!」
「それは・・」
「貴様、何をしている」
低い声と同時に、ケイトリンに覆いかぶさっていた男の身体が、突然宙を舞った。男は「うわっ!」という叫び声とともに地面を転がり、一目散にその場を去った。
「大丈夫か」
ケイトリンがそっと目を開くと、見たことのある紫の瞳が、自分を覗き込んでいた。わけがわからず差し出された手を掴んで立ち上がる。
「レイフ様。どうしてこんなところに」
レイフは全身が黒っぽい服装であるという点では、舞踏会の時とそう変わらなかったが、つばのある帽子を目深にかぶり、質の悪そうな外套を羽織っている。どう贔屓目に見ても王子には見えない。おまけに、つり上がった眼でケイトリンを睨みつけた。
「それは、私の台詞だ! こんなところで何をしている!」
「何をって、私は、今日兄と買い物に来たんです」
「その兄はどこにいる」
「えっと、途中ではぐれてしまって」
レイフがどうしてこんなに怒っているのか、ケイトリンにはわからなかった。細かい説明をすれば納得してくれるだろうと思うのだが、その機会を与えられる前に、レイフは怒りの矛先をギースに向けた。
「はぐれただと!? ギースのやつは何を考えているんだ。妹をこんな危険な目に遭わせて」
妹を守る騎士だとギースがレイフに宣言したのは、ついこの間のことだ。
「兄は悪くありません。私が勝手に来たんです」
「勝手に? まったく、あなたもあなただ。ここが、ミルド国一の貧民街だとわかっているのか! 私が見つけなければ、今頃どうなっていたか!」
「それは・・」