【仮面の騎士王】
ケイトリンは、首筋に当たる冷たい鉄の感触とふたりのやり取りに、ようやっと事態を理解した。部屋に侵入したこの男は賊で、今まさに、自分は窮地に立たされているのだ。
それでも、ケイトリンはすぐにこれが現実のことだとは思えなかった。しかし、夢にしては、背中に感じる男の重みも体温もひどく現実的だった。
耳元に男の息がかかる。それは、妙に荒々しく先ほどまでの余裕のある態度を見せた男の息遣いとは異なっていた。ケイトリンは、男の腕に拘束されたまま顔だけを動かし、そっと男の顔を盗み見た。
(仮面をつけているのかしら? なんだか様子が変だわ)
マノンの持っている明かりだけでは、はっきりとしないが、男は目もとを黒い布で覆っているようだった。高い鼻筋と、魅力的な唇は外気にさらされてはいるが、その唇がわずかに震えているように見える。
このままひどい目に遭わされるのだろうか、そう思った時、「くっ!」という男のうなり声とともに、ドスンという音がした。背後に感じていた重みが急に消えうせ、ケイトリンはふらついた。
恐る恐る視線を足元に移動させると、黒い外套を羽織った男が床に膝をつき、左の脇腹を手で押さえている。
右手に握った剣を床につき、なんとか体が倒れないように支えているが、激しい呼吸は、その状態が長く持ちそうもないことを語っているようだ。
「ケイト様!」
マノンはケイトリンに駆け寄ると、お互いを抱き合うような恰好になり、男から距離を取った。
男はぜいぜいと肩で息をしている。どうやら立ち上がる力さえなさそうだった。
(どうしたのかしら?)
ケイトリンは、いまだ窮地の真っただ中にいるというのに、なぜか男のことが気になって仕方なかった。
「ケイト様! お怪我をされたのですか!」
それでも、ケイトリンはすぐにこれが現実のことだとは思えなかった。しかし、夢にしては、背中に感じる男の重みも体温もひどく現実的だった。
耳元に男の息がかかる。それは、妙に荒々しく先ほどまでの余裕のある態度を見せた男の息遣いとは異なっていた。ケイトリンは、男の腕に拘束されたまま顔だけを動かし、そっと男の顔を盗み見た。
(仮面をつけているのかしら? なんだか様子が変だわ)
マノンの持っている明かりだけでは、はっきりとしないが、男は目もとを黒い布で覆っているようだった。高い鼻筋と、魅力的な唇は外気にさらされてはいるが、その唇がわずかに震えているように見える。
このままひどい目に遭わされるのだろうか、そう思った時、「くっ!」という男のうなり声とともに、ドスンという音がした。背後に感じていた重みが急に消えうせ、ケイトリンはふらついた。
恐る恐る視線を足元に移動させると、黒い外套を羽織った男が床に膝をつき、左の脇腹を手で押さえている。
右手に握った剣を床につき、なんとか体が倒れないように支えているが、激しい呼吸は、その状態が長く持ちそうもないことを語っているようだ。
「ケイト様!」
マノンはケイトリンに駆け寄ると、お互いを抱き合うような恰好になり、男から距離を取った。
男はぜいぜいと肩で息をしている。どうやら立ち上がる力さえなさそうだった。
(どうしたのかしら?)
ケイトリンは、いまだ窮地の真っただ中にいるというのに、なぜか男のことが気になって仕方なかった。
「ケイト様! お怪我をされたのですか!」