【仮面の騎士王】
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屋敷に戻るころにはすでに日は沈んでいたが、ケイトリンは着替えをする間も惜しんでギースの部屋を訪れた。
「貧民街ができたのは、私たちのせいなのですか?」
椅子に座ると開口いちばん、ケイトリンは、身を乗り出してギースに尋ねた。ギースは、身振りに筆談を加えて答える。
――ずべてがそうというわけではない。でも、否定はできないね。アルフォンス王の即位以来、税金が5倍に跳ね上がったんだ。だから、庶民の生活は苦しい。
「5倍!? なぜそんなことになったのですか?」
――貴族の贅沢がいちばんの原因だろうね。ランベール前国王の死が突然だったために、その死を悼むという理由で、あちらこちらで追悼の儀式が執り行われた。ところが、それが次第に定着して毎夜のようにばか騒ぎが行わるようになったんだ。
ギースはため息をつきながら、説明を続ける。
――ランベール前国王の死から10年経った今では、宮廷舞踏会は月に一度開かれるようになったし、宮廷舞踏会だけじゃなく、貴族が個人で開くパーティも当たり前のように毎日どこかで開かれているんだ。
「個人でのパーティが良く開かれているのは知っています。でも、まさかその資金のために税金を上げていただなんて」
ケイトリンにもさまざまな貴族からの招待状が毎日のように舞い込んでいる。それらに出席することはなかったが、宮廷舞踏会に参加した今は、それがどんなに贅沢なことなのか想像に難くない。