【仮面の騎士王】
ケイトリンは、話題を変えようとして不意にレイフのことを思い出した。
「そういえば、レイフ様は、どうしてあんなところにいらっしゃったのでしょう」
まさか、自分と同じように貧民街に迷い込んだわけではあるまい。助けてもらったお礼もきちんと言えずに別れてしまった、とケイトリンは思った。同時に、唇の感触を思い出して急に恥ずかしくなった。慌ててその状況を頭から追いやり、はたと思い出した。
「街で会ったとき、レイフ様がご自分のことを“俺”とおっしゃったんです。でも、そんなはずないですよね。私の聞き間違いかしら」
ギースは何も答えず、ただ口角を持ち上げて、にっこりと笑った。
――今日は本当に疲れてしまった。もう、寝よう。話の続きはまた明日だ。おやすみ。
「はい。お邪魔してすみませんでした。おやすみなさい、お兄様」
ギースの頬に自分の頬を寄せて立ち上がると、ケイトリンは、素直に自分の部屋へと向かった。
近頃、立て続けにいろいろな出来事が起こる。そして、そのことについて、もっと深く考えなくてはならないような気がしていた。
(私、今まで外の世界のことを何も知らずにいたのだわ。まず、あの子どもたちに靴を作ってあげなくては。それから・・)
寝台に入って目を閉じると、ケイトリンはあっという間に睡魔に襲われた。
マノンは、ケイトリンが眠っているのを確認すると、枕元の明かりを落として部屋を暗くする。
しんとした部屋の中で、ケイトリンの心地よい寝息が音色のように静かに響いた。
「そういえば、レイフ様は、どうしてあんなところにいらっしゃったのでしょう」
まさか、自分と同じように貧民街に迷い込んだわけではあるまい。助けてもらったお礼もきちんと言えずに別れてしまった、とケイトリンは思った。同時に、唇の感触を思い出して急に恥ずかしくなった。慌ててその状況を頭から追いやり、はたと思い出した。
「街で会ったとき、レイフ様がご自分のことを“俺”とおっしゃったんです。でも、そんなはずないですよね。私の聞き間違いかしら」
ギースは何も答えず、ただ口角を持ち上げて、にっこりと笑った。
――今日は本当に疲れてしまった。もう、寝よう。話の続きはまた明日だ。おやすみ。
「はい。お邪魔してすみませんでした。おやすみなさい、お兄様」
ギースの頬に自分の頬を寄せて立ち上がると、ケイトリンは、素直に自分の部屋へと向かった。
近頃、立て続けにいろいろな出来事が起こる。そして、そのことについて、もっと深く考えなくてはならないような気がしていた。
(私、今まで外の世界のことを何も知らずにいたのだわ。まず、あの子どもたちに靴を作ってあげなくては。それから・・)
寝台に入って目を閉じると、ケイトリンはあっという間に睡魔に襲われた。
マノンは、ケイトリンが眠っているのを確認すると、枕元の明かりを落として部屋を暗くする。
しんとした部屋の中で、ケイトリンの心地よい寝息が音色のように静かに響いた。