【仮面の騎士王】
「あっ!」とマノンが声を発したのと、ケイトリンが男に駆け寄り、その体を全身で支えたのはほとんど同時だった。


 ケイトリンが我に返った時には、自分と男の身体はぴたりと密着していた。


「ケイトリン様? どうかなさいましたか?」


 兵士の緊迫した声が響く。


 すでに、ケイトリンの心は決まっていた。唇を引き結び、扉へと視線を移動すると、震える声を懸命に抑えて答えた。


「私は、なんともありません。マノンが来てくれているので、大丈夫です。ここは良いから、他を手伝ってあげて」


「はっ。何かありましたら、すぐにお呼びください」


 渡りに船とばかりに安堵しかけたマノンは、ケイトリンの言葉に、ぎょっとして彼女を凝視した。


「ケイト様、何をお考えなのです?」


「お願い、マノン。この方、どうしても悪い方には思えないの。お父様に捕まればきっと助からないわ。助けてさしあげたいの」


「いつも拾ってこられる鳥や犬とは違うのでございますよ。この男は、ケイト様に乱暴するところだったのです」


「でも、この方は乱暴なことなど何もなさらなかったのよ。剣を突きつけられたけど、切り付けはしなかったわ。雷におびえた私を優しく抱きしめてくださって・・」



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