時空を飛び越えました~私の知ってる新撰組ではないようです~
◆飢える男
あぁ、渇く。消えることのない渇きに、男はただため息を吐いた。
「御前(ゴゼン)様」
男の腕や足に数人の女たちが腕を絡ませる。
「あぁ、渇く」
「ご、ぜ……ッ!!」
傍らにいた女を引き寄せると、躊躇することなく首筋に牙を立てた。
室内に独特な血のにおいが広がる。目の前の光景に、女たちは怯える素振りなど見せず、逆に羨ましそうな視線を向けていた。
女が青白い顔をし始め、男は女を放した。支えを失った女は重力に逆らうことなく床に崩れ落ちた。
「あぁ、渇く」
いくら飲んでも、喉の渇く感覚が消える事はない。
男は、口元につく血を舌で舐めとると再び重いため息をついた。