政宗かぶれの正志くん
そういえば、昨日彼は「また後日」と言っていた。


後日、近すぎ。


キラキラと朝日を浴びて微笑む顔が今日も大変麗しい。


そういえば、何でコイツは私のアパートを知っていたのだろうか。


道案内なんて1つもしていないのに、無駄のないルートで送り届けられ、今も目の前に立っているという事実に背筋がゾワッと冷えた。


コイツ、どこまで私のことを知っているのだろうか。


生まれ変わりだとわかった(間違えてるけれど)くらいだから、何か特殊な能力者…とか?


いやいや、落ち着け私。


そんな訳ないんだってば。


それは小説の中で起きるフィクションなんだってば!


頭の中がぐるぐるして1歩も動けない私に1歩1歩歩み寄ってくる美人はあっさり目の前に立ち、


「良い朝だな」


と私の鞄を手に取る。


朝日を受けて爽やかに輝くその笑顔にうっかり鞄を渡しそうになるけれど、寸前の所でグッと手に力を入れた。


「何で、いるんですか。そもそも何でここが私の家と知っていたんですか。ついでに言うなら、私は愛姫の生まれ変わりじゃないと思います」


その勢いで彼を睨み付けながら言ってやったのに、彼から返ってきたのは


「めごは目の力が強く美しいな。朝から良い物を見れた。感謝する」


という、明後日の方向な賛辞。


背筋が抜かれたかの様な脱力感を感じた。
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