政宗かぶれの正志くん
「何か、もういいや。で、何か用ですか?朝っぱらから出待ちされて正直怖いんですけど」


溜め息を隠すことなく、むしろ大袈裟について、呆れてます疲れます迷惑です的な空気を醸し出す私など全く気にせず、彼は微笑んだままソッと自分の左胸に右手を当てた。


「昨晩、ゆっくり考えてみたのだ。めごを混乱させてしまったのではないか…と」


「混乱しない方がおかしいですよね、あんな話」


「よって、一席設けて、話をしようと思うてな。今晩はどうだ?今宵は満月だ」


満月、どうでもいい。


この変人美人と関わるのはお断りだけれど、いろいろと気になる点はある。


少なくとも、家バレの件は場合によっては引っ越しを要すかもしれない。


元々私は基本的には白黒ハッキリさせたい性質だ。


例外は、あれど。


もしも本当に、本当に生まれ変わりであれば、何故それがわかったのかや、あるのならば前世の話なんかも少し聞いてみたい。


今晩…用事はないし、バイトもないし、帰ってゴロゴロするだけだから時間は取れる。


でも、それまで私は落ち着いて過ごせるだろうか。


家がバレているのが、もしも私を悪とする誰かの陰謀でネットなどにさらされているからだとしたら?


なんて頭を過ったら、講義なんて頭に入らない。


…今、過ったし。


「…伊達さん?は、今日学校ですか?」


現世の呼び名がわからないから、そう呼ぶと彼は満足げに頷き、今日は休みだと言う。


自分の今日の講義は、大会堂で行われる物と、出席は取られない物だけ。


「今から、聞きます」


私は、自他共に認めるせっかちさんなのだ。


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