政宗かぶれの正志くん
黒光りバイクで連れてこられたのは、全国各地に点在する某ファミレス。


意外なチョイスだと思ったけれど、よくよく考えれば現在朝7時50分。


24時間営業といえば、まずはこれを思い出すのは当たり前だ。


朝食は面倒で食べていないと言えば、何故か怒られ、目の前にはモーニングが並んでいる。


お母さんか、お前は。


そう悪態をつきながら、パンをかじる。


フワッと広がる甘さに、自分の空腹を自覚した。


黙々と食べ進める私の前で、彼は優雅にコーヒーカップを傾けている。


ファミレスでも溢れる気品。


添えられた指の綺麗なこと。


それに引き換え、ングっングっとアイスコーヒーをがぶ飲みする私の品のなさよ。


親父か。


性別が入れ替わればしっくりくるのに。


そんなことを思いながら食べ終えた朝食は、大変美味しく感じた。


「ごちそうさまでした」と手を合わせると、彼は「では、始めようか」と机の上で手を組んだ。


「何から話をしようか」


そう問う彼に、1番の気がかりである家バレ問題を切り出した。


答えは簡単。


「晴香殿に聞いた」


脳内に「ごめんって」と舌を出す奴の顔が浮かんだ。
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