政宗かぶれの正志くん
私の個人情報はだいたい晴香から聞き出し済みらしい。


またも出身地を「天照大神のお膝元」と表現されるとは思わなかった。


悪びれることなく、にこやかにそう話されると怒る気も失せる。


晴香がケーキバイキングに釣られたのもまた、彼女らし過ぎる。


携帯番号も知っている癖にかけてこなかったのは、よく分からないが彼の流儀らしい。


お代わりしたアイスコーヒーの氷をグルグルとストローでかき混ぜながら、次は何を聞こうかと決めかねていると、彼は勝手に自分の現状を語り始めたので、大人しく耳を傾けることにした。


「我は仙台で現代に生を受けた」


「そういえば、伊達さんは今何歳ですか?」


「めごの1つ上だ」


ということは、大学4年生か。


「父は仕事が忙しく、国内外問わず出張することも多くてな。母は随分淋しい思いをしていたらしい」


「…らしい?」


「弟から聞いた話だ。我は直接母と話したことはほぼないからな」


そこまで話して一呼吸置いて、彼は静かに続けた。


「我は母に嫌われている。話をするのは勿論、関わったこともほぼない。弟は逆に溺愛されていたがな」


その表情から今も苦しんでいるのは一目瞭然で、言葉に詰まる。
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