政宗かぶれの正志くん
「理由はわからない。聞くことすら許されなかった。育ててくれたのは父方の祖父だ。父が家にいる時は在宅を許されていたが、父がいない時はずっと預けられていた」


物心ついた時から続いたそれは今も彼の心を傷つけているのか。


多少変人ではあるものの、美人であり、東大にいける程の能力持ち。


何が気に入らなかったのだろう。


お腹を痛めて産んだ子のはずなのに。


この人は母親に愛されず、どれ程辛い思いをしてきたのだろう。


…胸が締め付けられる。


何か言ってあげたくて、何か励ましてあげたくて、でもそのための言葉は1つも浮かばない。


それでも何か言いたくて、「あのさっ!」と切り出した私の声を遮ったのは、伊達さんの力強い一言だった。


「まるで伊達政宗公のようだろう?!」


「…へ?」


勢い余ってちょっと前のめりになってしまった私に彼は続けた。


「よって、我は伊達政宗公の転生に違いな…」
「ちょっと待て!!!!!」


思わず彼の言葉を遮ってしまったけれど、仕方ない。というより、当然だと思う。


「…どうした?めご。大きな声を出し…」
「転生したって、まさか、それが根拠って言わないよね?」


え?何か問題でも?と言いたげなその面が肯定している。


返せ、私の悩んだ時間。


返せ、私の傷んだ胸。


『転生』を信じた私の純粋な気持ちをっ!
< 41 / 55 >

この作品をシェア

pagetop