政宗かぶれの正志くん
『転生』ではなく『自称転生』だったという、あまりにも現実的かつ馬鹿らしいオチ。


脱力感からソファに沈む私に、伊達さん、いや、自称伊達政宗が話し続ける。


「出身地、取り巻く状況、そのすべてが指し示しているであろう?」


私が向ける白けた視線など、彼にとってはどうでもいいらしい。


いや、確かに生い立ちは不憫で、伊達政宗の幼少期に似てはいるけれども。


「片山と高田、それにめごまで現れた。間違いないのだ」


何て力強い語尾。


「いやいや、私はめごじゃなくて、愛姫だから。あーいーひー。そもそも、片山と高田って」
「片山は片倉小十郎、高田は伊達成実である」


私の発言を遮る力強さ。


「…根拠は?」


「2人とも幼き頃より側におった。片倉は現世の名を片山という」


私の愛姫=めごひめと同じ理論か。


「高田さんは?」


「あれは、現世に降り立つ時に名を間違えたのだ。うっかりしたところがあるからな」


困った奴よ…と笑っている場合か。


アンタが1番困った奴だよっ!!!


そこで、ようやく私はもう1つ聞いとくべきことを思い出した。


「で、伊達さんは現世、何て名前なの?」


よくぞ聞いてくれたとばかりの微笑み。


え?間違えた?


自分に興味あるとでも思っちゃった?


「我の現世の名。それは…」


もしかして、『伊達政宗』だったりする?


「伊藤正志であるっ!」


「絶妙に残念だわっ!」


勿体ぶってんじゃねーよっ!!!


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