政宗かぶれの正志くん
眼帯は結局のところファッションで、転生はただの思い込みで、周囲の人間もその妄想に巻き込んでしまっている。


それも、結構なこじつけで。


高田さんなんてかすりもしていないのに。


ただ、その原因が母親だと考えると、呆れや苛立ちよりも同情が勝つわけで。


現実逃避したくなる程に辛かったんだな…とか、そう思い込むことで必死に生きてきたのかな…とか、考えてしまうわけで。


結果、伊藤正志という人間を完璧に作りすぎた神様が慌てて欠点をつけ足したら余りにも雑すぎた的な産物だと結論づけてみた。


うん、これだ、これ。


弄っちゃいけない所を弄られちゃったんだ。


不憫な奴。


「正しく志すと書いてマサシと読む」と字を説明した彼を思い出す。


志し、間違えちゃったんだな。


でも、それで今、強く楽しく(多少問題ありだが)生きていけるなら間違えていなかったのかもしれない。


薄幸の美人、でも変人、伊藤正志。


バイク運転時は惜しみ無く眼帯を外す真面目人間でありながら、待ち伏せや情報漏洩に積極性を見せる不届き者。


一人称は「我」だけれど、華奢で儚い雰囲気の彼にはあまり似合っていないし、バイクはともかくヘルメットまでも馬仕様。


わずかな日数で得たこの情報が多いのか少ないのかもわからないし、必要か不必要なのかもわからない。


彼の存在が疎ましいかといえば、そうでもない。


だからといって、嫁ぐ気はさらさらない。


金輪際会いたくないとまでは思わないけれど、面倒なのに目をつけられたな…とも思う。


何だ、この考えれば考えるほど深みにハマるような感覚。


底無し沼か。






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