政宗かぶれの正志くん
せっかちな私は、すぐに物事の白黒をつけたがる傾向にあると自覚している。


故に、考え続けることも悩み続けることも苦手だ。


嬉しいのか困るのかわからないこの出会いをどう処理したらいいのかわからない。


迷惑極まりないメゴヒメ認定ではあるものの、排除する気になれない自分にまた悩む。


面倒くさい。でも、捨てるには惜しい面白人材伊藤正志というところ。


噛めば噛むほど味が出るカミカミ昆布的な、癖になるキャラクター。


稀にみる美形だし、目の保養になる。


そんな人に「か弱い女」扱いされるのも、心をくすぐられる。


ちょっとだけ。うん、ちょっとだけだけどさっ。


「しょうがない。友達にしてやろう」


うん、うん、と頷きながら出した答えは1人ぽっちの部屋に静かに響いた。


さて、今さら大学へ行く気はさらさらない。


空いたこの時間を有意義に使おうではないか。


私は強制的に伊藤正志を脳内から追い出すと、スーパーへ向かうことにした。


せっかくだから、タイムセールへ行こう。


おばちゃんたちに混ざって1袋100円で入れ放題の玉ねぎと人参をゲットしよう。


挽き肉も買って、カレーの作りおきでもしよう。


ご飯もたくさん炊いて小分けに冷凍しよう。


あ、もしも豚のブロックが安売りしていたら角煮も作りおきしたい。


野菜も安いのがあれば買い溜めして冷凍保存してしまおう。


すっかり主婦モードに切り替わった私は財布片手に家を出た。
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