政宗かぶれの正志くん
…今朝もハイテンションで何よりだ。


毎朝6時ジャストに送られてくる伊藤正志からのメールを私は密かに『伊藤通信』と呼んでいる。


ファミレスで話した翌日から欠かさず送られてくるそれは、その日の天気から始まり、生活の豆知識やら安売り情報、テスト勉強のコツやら重点の絞り方に論文の書き方、ニュースや歴史の解説など多岐に渡る。


たまに、いや、頻繁に仙台のオススメのスポットや食べ物の情報も入る。


そして末文に生命に感謝して今日も頑張れ的な挨拶が添えられている。


SNSアプリが主流となっているご時世に昔ながらのメールでのメッセージを送ってくるのは、ダイレクトメールか伊藤正志かくらいのものだ。


しかも、使える情報が多い。


ついでに目覚まし時計代わりにもなる。


返事を送らずとも必ず送られてくる。まさにダイレクトメール。


その内容について呆れたり感心したりしながら朝シャンするのが、毎日の日課になってしまっている。


今日も例外なく、シャワーを浴びながら考える。


情報はいいのに、あの口調が呆れを呼ぶんだよね。


今日は酢推しか。たまにあるんだよね、食品推し。


大根おろしにしらす干しが駄目とか知らなかったんだけど。


ずんだシェークとか、オススメなら持ってこいよ。


…いや、言ったら本当に持ってきそうだな。ドロドロに溶けたやつを。


しかし、こんなに晴れてるのに雨が降るのか。さすが、梅雨。


伊藤に言われてなければ洗濯物も私もずぶ濡れコースだったわ。


体を拭いて濡れたタオルを入れた後、洗濯機のスイッチを入れながら、溜息が溢れた。


伊藤正志が生活の一部にあっさり入り込んでいる現実にだ。


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