政宗かぶれの正志くん
「いいじゃない、別に。そんなに考えなくても。恋は頭じゃなくて、胸でするんだぜ!」


キメ顔で自身の右胸にピストル型にした右手を突きつける綱木さん。


…日本の離婚率を底上げしている奴に言われたくない。


「恋をするって素敵なことだよ?まだ若いんだから」


そう諭してくれる早瀬さんに、


「娘さんが結婚される時のこと、奥様から聞きましたよ?」


と返してやると、「ワハハ」と笑って流された。


彼は娘が結婚の挨拶のために連れてきた恋人に塩と間違えて砂糖をまいた上に、「恋なんてまだしなくていい!」と泣きついた過去を持つ。


因みに、娘さんは当時28歳。


今恋することを勧めた私よりも年上である。


「まぁよ、愛。皆の気持ちも汲んでやれ。お前には幸せになってほしいんだ」


気持ちを汲めって言われても!


面白がってるじゃん!!


…と言い切りたいところだけれど、面白がりながらも気をかけてもらっているのも伝わってはいるわけで。


うっかり、心に暖かいものが…


「愛ちゃん!騙されるなよ!この人、愛ちゃんと伊達の兄ちゃんがデキるのに1000円賭けてるからね!因みに俺はデキない方に賭けてるから頼むよ!」


「ワシはデキるに3000円よ」


「僕はデキないに500円だよ」


…素通りした!!


「ふざけんなっ!!このボケナス共めっ!!」


思わず怒鳴り付ける私を笑う常連客と熊野郎。


…残念なことに、心が暖まってしまった。
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