君の涙は空へと還る
ああ…。
最悪だ。
遡る事1時間前―。あの後、店長が通報し、最寄りの交番からお巡りがやってきて、件の強盗犯(未遂だが)の目を覚まさせようと必死で頑張ってはくれたのだが、なんと強盗犯は完全にのびており、依然として意識を取り戻さなかった。
そこで、救急車が呼ばれ、到着した救急隊員の迅速な処置により漸く強盗犯の意識は回復した。
そして強盗犯は駆けつけた警官たちに連行されていった。
オレはというと、相手に重篤なケガなどが見受けられなかった為、今後こういった事のないようにと厳重注意されるに留まった。
まあ、強盗犯がシャレにならない状態に陥っていたとしたら過剰防衛でオレもパトカーに乗せられていたかもしれない。どうでもいい事だが。
それよりも参ったのは、その後、延々と続いた店長の説教めいた愚痴の方だ。

「榊くん…キミねぇ…。どうしてああいう無謀な事したワケ? ちゃんと強盗対策については教えてあるでしょう?」

うるさい。いざという時カーネルサンダースみたいに固まってたのはどこのどいつだ。

「困るんだよねぇ~。もし刺されちゃってたらどうするつもりだったの!?
キミだけじゃないんだよ? 他のバイトの子たちとか、お客さんとか巻き込まれちゃったらどうするの!?」

てめえが心配してんのはこの店と自分の事だけだろーが。

「こんな事言いたくないんだけどさあ…。キミ愛想悪いし、ロクに口もきかないし、こちらとしては扱い難いんだよねぇ。」

「辞めます。」

「なんていうかもっと、え?」

話を遮られてマヌケな顔で呆然としている店長を横目に、オレはコンビニ指定の制服であるジャケットを脱ぎ捨てた。

そのまま自分のロッカーからバックパックを取り出し、足早に店を後にした。
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