無題
【予知師】という生き物は、融通が効かないものだ。

他人の未来を見、生を受けた瞬間にその人間に自分が見た未来を授ける。









産まれた時に、予知師となれる人間は限られている。
1人は、この世界を統治する王。
1人は、予知師となるべく生まれた者。
1人は、(非常に稀だが)強い魔力を有する者。









ダナイは、この非常に珍しい、高い魔力を有する者であった。
師匠も高い魔力を有し、予知師になるべく生まれたという、神に愛された人だ。
元々孤児院で育ったダナイを引き取ってくれたのが、師匠だった。









師匠はダナイに、まず予知師としての禁忌を教えた。
一つ、予知の内容はその予知された本人以外に伝えてはならない。
一つ、予知の内容を変えようと行動してはならない。
一つ、その予知がどんなに残酷なものであろうと、その人に情を、持ってはならない。









だからこそ、予知師には、孤児が多い。

親がこの力を恐れ、羨み、また、その使命を実行できるようにと願いを込めて。
親としての情が、孤児という道を選ばせる。ダナイもそうであった。

















予知師が友人を作ることは滅多にない。
それは、予知師としての禁忌を犯すことを恐れるためだ。
だから、友人であるマリナとその夫、ジンはかなりの変わり者で、お人好しで、優しい人であることはダナイが一番よくわかっていた。








そんな友人が、自分の運命を知ってしまい、それを嘆いている時。
ダナイは、慰められない。寄り添えない。
どうしていいか、わからない。

友人としてなら寄り添ってもいいのかもしれない。慰めてもいいのかもしれない。だが、それはきっと禁忌に触れてしまう。



ダナイは密かに、自分が予知師であることを、生まれて初めて呪った。
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