無題
師匠は穏やかに微笑みながら、ダナイ達を迎えた。
ここには、予知師しかいないため、皆ベールは外している。

「そうかい、その子が選ばれし子かね。」
「はい、お師匠様。」

ここに来てから、ラティはダナイのマントの裾を掴んで離さない。
そんなラティの頭を軽く撫でてから、ラティを前に押し出した。

「こんばんは、お嬢さん。ようこそ。」
そう言って師匠は微笑んだ。
師匠の笑顔は危険だと個人的に思う。
人の良さそうな穏やかな老人の笑みに騙されて、これまで何人が天に召されたことか。
現に、ラティは微笑んでいるし、僕に預けている身体の力を抜いた。
この人たぶらかし野郎め。
「何か言ったかね、ダナイ?」
「いえ、何も。」

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