朧咲夜Another【短編・完】
1 仕組まれた再会
(……大丈夫だったかな、あの子)
空港のターミナルで、流夜はぼーっと考えていた。
高校の寮からの出がけに一つ案件に呼ばれた帰り、空港に来るのに使おうとしていた駅の近くで一つもめ事に関わって来た。
まあ、あの華取在義の管轄内だし、パトカーの刑事たちも現場の方を認識していたし、彼女や被害者らしいおばあさんにも実害はないようだったから、大丈夫だろう。
流夜は壁に預けていた背を離す。
そして少しだけ歩き一人の腕を摑む――摑みあげた。
「いっ⁉」
「手癖悪いな、あんた」
「な、なんのこ――
流夜がねじりあげた手から、財布が落ちた。
周囲がざわついたのに気づいてか、警備員が慌てたようにやってきた。
「どうされました」