朧咲夜Another【短編・完】
「……俺って言うのもやめとけ。お前の見た目では余計に目立つ」
「はいはい。わたし、だっけ?」
「……似合わねえな」
「てめえでけしかけておいてそれかよ! あー、なんでこんな人に逆らえないんだろ……」
斎月はげんなりし出した。忙しい奴だな。
「それより、どうして急にこっち来る気になった? 両親はまだアメリカ(むこう)だろ?」
「あー、祖父母のところに世話になることにした。理由は、一応血縁上の兄貴がいるらしいことがわかったから、ちょっとどうにかしておこうかと、な」
血縁上の兄貴?
斎月の返事に、流夜は無表情しか返さなかった。