朧咲夜Another【短編・完】
今までも十分むかっぱらだったが、臨界点だ。
話し合っている男のうちの一人、咲桜に半分背中を向けている男めがけて鞄を投げつけた。
「上等! 売られる喧嘩あるんなら買ってやる!」
「なっ⁉ なにしやが――
「何しやがってんだ、はお前らの方だ」
完璧に頭に血がのぼっていた咲桜の耳に、風のように聞こえて来たのは静かな声だった。
――え? 誰? と思った瞬間には、鞄を投げつけられて咲桜に怒りを見せた男が――宙に吹っ飛んでいた。
「取りあえず、三人確保でいいか」
また、静かな声。
一人の男の子が、そこにいた。
男の子に気づいた残りの二人は、殴りかかろうと――する前に、的確に腹と後頭部に拳を入れられて地に伏した。
「大丈夫か?」