朧咲夜Another【短編・完】
苦い声を出したのは吹雪だった。
いきなり名前を呼び捨てられたけど、どうしてか咲桜は全然嫌じゃなかった。
「大丈夫だよ。私、彼氏とか作る気ないし」
「……本当に? 琉奏に遠慮してない?」
吹雪はまだ胡乱な顔をしている。
「琉奏に遠慮する理由もないよ。ただ、他にやりたいことがあるだけ――
「吹雪! 降渡!」
氷の矢のように飛んできたのは怒声だった。
「げ、見つかったー」
「遅いよ、流夜」
二人は流夜に秘密で来たのだろうか。
現れた流夜は仁王立ちで怒った顔をしている。