朧咲夜Another【短編・完】
「私に御用ですか?」
流夜のことから存在は知っていたけど、わざわざ訪ねてこられるなんて。
咲桜の傍で琉奏は落ち込んでいる。
「御用って言うか、ちょっと華取さんのこと見てみたくてね」
「? 私、ですか?」
「咲桜。こいつらと話さなくていい。いらんことばかり吹き込まれるから。帰るぞ」
さっと流夜は咲桜の左手を握って、歩き出してしまう。……え?
「―――神宮!」
正気に戻った琉奏が怒って叫ぶと、流夜はかったるそうな瞳で見返す。
「なんだよ」
「なんでお前が咲桜連れてくんだよ! つか、当たり前のように手を取るな!」
そこまで言われて、咲桜ははっとした。
がっちり手を握られている。……ええっ⁉
「お前は咲桜の彼氏でも、偽者なんだろ?」