先輩、一億円で私と付き合って下さい!
第七章 願いが叶うケーキとは・・・
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プチ家出も朝帰りも初めての事だった。
一夜明け、過ぎ去ってしまえば、落ち着いていたのだが、母はそうではなかった。
ドアを開けた時、母は椅子から立ち上がり、悲壮な顔つきを俺に向けた。
目が赤くなっているところを見ると、泣き続けていたのだろう。
何かを言おうとしているけど、敢えてそれを抑え込んで口元を震わせている。
一晩でやつれた母の姿を見ると、俺は罪悪感にさいなまれた。
「ただいま」
昨夜の事がなかったように、俺は振る舞う。
「おかえり」
母も必死に俺に合わそうとしていた。
俺がどこに居たか、何をしていたか、それを訊くのが怖いのか、それとも訊かないようにしてるのか、不気味なほど沈黙が続き、母はただお茶の用意をしていた。
こんなじめっとした蒸し暑さの季節に熱いお茶は飲みたくなかったが、母が何も言わずに俺の分を用意すると、俺はテーブルについて、それを受け取る。
「お腹空いてない?」
おれは首を横にふり、湯飲みを手にして、一口すすろうと口元に持って行く。
意外にもそれはぬるくて、母らしからぬ淹れ方だった。
普段はもっと熱いのに。
プチ家出も朝帰りも初めての事だった。
一夜明け、過ぎ去ってしまえば、落ち着いていたのだが、母はそうではなかった。
ドアを開けた時、母は椅子から立ち上がり、悲壮な顔つきを俺に向けた。
目が赤くなっているところを見ると、泣き続けていたのだろう。
何かを言おうとしているけど、敢えてそれを抑え込んで口元を震わせている。
一晩でやつれた母の姿を見ると、俺は罪悪感にさいなまれた。
「ただいま」
昨夜の事がなかったように、俺は振る舞う。
「おかえり」
母も必死に俺に合わそうとしていた。
俺がどこに居たか、何をしていたか、それを訊くのが怖いのか、それとも訊かないようにしてるのか、不気味なほど沈黙が続き、母はただお茶の用意をしていた。
こんなじめっとした蒸し暑さの季節に熱いお茶は飲みたくなかったが、母が何も言わずに俺の分を用意すると、俺はテーブルについて、それを受け取る。
「お腹空いてない?」
おれは首を横にふり、湯飲みを手にして、一口すすろうと口元に持って行く。
意外にもそれはぬるくて、母らしからぬ淹れ方だった。
普段はもっと熱いのに。