先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 別に咎めるつもりはなかったが、本人には良心の呵責があるようだ。
 朝は慌ただしく、あまり時間がなかったので、放課後会う約束を交わす。

 その放課後だが、いつものようにまた屋上に行こうとしたら、ドアに鍵が掛かっていていた。
「なんで、鍵が掛かってるんだよ」

 俺がドアノブをガチャガチャと荒く回して、何度も試みたが、それは硬く固定されて開くことはなかった。

「気づかれたんですね。寧ろ、今までがラッキーだったんですよ」

 扉が閉ざされると、そこで終わりと言われているみたいで、縁起が悪い。
 できたら、夏のスカッとした晴れた空の下で、もう一度ノゾミと付き合いたいと告白をしたかった。

 俺は諦め、ノゾミと向き合った。
 だがノゾミは俺と目を合わせない。
 恥ずかしがってる態度じゃなく、怯えて怖がっている。

「どうしたノゾミ」
「先輩、もう会わない方がいいです」

「どうしてだ。俺は──」
 この後告白するつもりでいた。

 だがとことん運が悪く、この時、見知らぬ先生がやってきてしまい、俺たちは注意された。

「お前らこんなところで何やってる。ここは立ち入り禁止だぞ。最近誰かがここを開けっ放しにしてたから、見回りにきたらこれだ」

 余計な仕事を増やしやがってとでも言いたかったのだろうか。
 機嫌が悪いその態度は、こっちまで苛々して腹が立ってくる。

「ほら、早く帰れ。学校でいちゃいちゃするんじゃない」

 俺たちはこの先生のせいで後味悪くなった。
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