先輩、一億円で私と付き合って下さい!
3
通夜は夕方からだと聞いていたが、次の日、俺は学校の帰りに家を訪ねてしまった。
それがどれだけ非常識であっても、礼儀を弁えろといわれても、どうでもいいというくらい、ノゾミに会いたかった。
まだこの時点では現実味を帯びてなかったが、葬儀の飾り付けが目に入った時、押しつぶされそうに怖くなった。
関係者の人たちが黒い服を着て出入りしている。
俺は遠慮もなく、ドアが開きっぱなしの玄関へと向かった。
誰かが対応してくれたおかげで、志摩子と会う事ができ、志摩子は丁寧に挨拶して、俺を歓迎してくれた。
「来てくれたのね。ノゾミも喜ぶわ」
辛いだろうに、俺には笑顔を見せていた。
いつものほんわかとした優しさがそこにあった。
部屋の奥。
シンプルでいてコーディネイトされていた素敵な部屋は、全く違う悲しみの部屋に変貌していた。
ノゾミは布団に寝かされて、顔に白い布を掛けられている。
志摩子はノゾミの傍で正座して、そして布を取り除いた。
青白く、冷たく横たわるノゾミはただ眠ってるようにしか見えなかった。
俺は呆然としてしまい、発狂して大声を上げそうになるのを必死でこらえて震えていた。
後ろから誰かが肩に手を置いた。
振り返ればノゾミの父親だった。
いつもはコックスーツを着てパティシエそのものの姿なのに、黒いスーツをまとっていると、ただのサラリーマンに見えた。
「天見さん、色々とノゾミがお世話になりました。ありがとう」
嗚咽を堪えて必死に俺に語りかけていた。
俺は何も言えなかった。
力なく、ノゾミの傍に座り込み、俺はノゾミの顔を見つめる。
付き合ってる間、キスの一つもできなかった。
それ以前に俺はノゾミと接している時、まともに名前すらちゃんと呼んでなかった事に気が付いた。
「ノゾミ」
もっともっと優しくしてやればよかった。
今頃になって後悔が募る。
後ろで誰かが俺の事をコソコソと話している。
「あの男の子誰? ノゾミちゃんの彼氏なの? うそ」
親戚なのだろうけど、肉親と違って悲しみの度合いが薄そうだった。
通夜は夕方からだと聞いていたが、次の日、俺は学校の帰りに家を訪ねてしまった。
それがどれだけ非常識であっても、礼儀を弁えろといわれても、どうでもいいというくらい、ノゾミに会いたかった。
まだこの時点では現実味を帯びてなかったが、葬儀の飾り付けが目に入った時、押しつぶされそうに怖くなった。
関係者の人たちが黒い服を着て出入りしている。
俺は遠慮もなく、ドアが開きっぱなしの玄関へと向かった。
誰かが対応してくれたおかげで、志摩子と会う事ができ、志摩子は丁寧に挨拶して、俺を歓迎してくれた。
「来てくれたのね。ノゾミも喜ぶわ」
辛いだろうに、俺には笑顔を見せていた。
いつものほんわかとした優しさがそこにあった。
部屋の奥。
シンプルでいてコーディネイトされていた素敵な部屋は、全く違う悲しみの部屋に変貌していた。
ノゾミは布団に寝かされて、顔に白い布を掛けられている。
志摩子はノゾミの傍で正座して、そして布を取り除いた。
青白く、冷たく横たわるノゾミはただ眠ってるようにしか見えなかった。
俺は呆然としてしまい、発狂して大声を上げそうになるのを必死でこらえて震えていた。
後ろから誰かが肩に手を置いた。
振り返ればノゾミの父親だった。
いつもはコックスーツを着てパティシエそのものの姿なのに、黒いスーツをまとっていると、ただのサラリーマンに見えた。
「天見さん、色々とノゾミがお世話になりました。ありがとう」
嗚咽を堪えて必死に俺に語りかけていた。
俺は何も言えなかった。
力なく、ノゾミの傍に座り込み、俺はノゾミの顔を見つめる。
付き合ってる間、キスの一つもできなかった。
それ以前に俺はノゾミと接している時、まともに名前すらちゃんと呼んでなかった事に気が付いた。
「ノゾミ」
もっともっと優しくしてやればよかった。
今頃になって後悔が募る。
後ろで誰かが俺の事をコソコソと話している。
「あの男の子誰? ノゾミちゃんの彼氏なの? うそ」
親戚なのだろうけど、肉親と違って悲しみの度合いが薄そうだった。