先輩、一億円で私と付き合って下さい!

「二番目の理由は自分のためです」
「二番目が自分のため?」

「はい。先輩に告白してみたかったんです。例え振られても、私という存在を先輩に知って欲しかった」

「それは大いに俺を印象づけたのは確かだ。一億円も、意表をついた。それも俺の気を引くための作戦だったってことか?」

「作戦とかそういうのじゃありません。私はただ、お礼として……」
「わかった。それよりも、一番目の理由はなんだ」

 一億円の話になるとまた堂々巡りになるので、この際横に置いといて、俺は一番目の理由が知りたかった。

「一番目の理由は……」

 ノゾミはここで視線を俺から逸らし、ぐっと歯をかみしめていた。
 中々言おうとしないので俺は急かした。

「どうした、なぜそこで黙るんだ」

「これは先輩は知らない方がいいからです。それにまだきっちりと私の中で整理しきれてなくて、言えません」

「おい、ただのお前の理由だろ。どうしてそれが言えないんだ。自分のためよりももっと意気込んだ理由があって、俺に付き合ってほしいと言ってきたんだろ。ここまで勿体ぶった言い方されたら気になるじゃないか。そこまで俺と付き合いたいと駆り立てた理由って一体なんだよ」

「私には色んな複雑な思いが混じり合ってます。一つ一つ理由づけても、それは一部分であって、本当の思いは全てが重なったからこそ、勇気を出して告白しました。だから分けて考えてはいけないのかもしれません。今、私が先輩の前に居て、そして彼女として扱ってもらっていること自体が奇跡なんです。この奇跡を起こしたかった。それが総合的理由だと、今気が付きました」

「おい、一体何を言ってるんだ? そんな難しく言われても俺にはさっぱり理解できない。お前と居ると、時々俺は置いてけぼりになるんだけど」

「すみません。どうしても一人で勝手に考えて、自分の中だけで話を進めてしまうみたいです」
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