先輩、一億円で私と付き合って下さい!
6
着いた先はオフィスビルが集まる街の中心部だった。
タクシーは道路の端に寄り、歩道に降りればすぐそばで人がひっきりなしに行き交った。
ざわめく雑踏。
油断のならない緊張感。
ぼやぼやしてると後ろから邪魔だと言われそうに、俺はそこでオタオタとしてしまう。
ノゾミの姉──そういえばまだ名前を聞いてなかった。
声を掛けようにも、なんと呼んでいいのかわからず、俺は躊躇してしまった。
「さあ、行くわよ」
「行くってどこへ」
「彼の会社よ」
聞いた事のある社名が入った前方のビルを指差していた。
「そこに行って何をするんですか」
「確かめるのよ、本当に既婚者なのか」
「なぜそこで、部外者の俺が行かないといけないんですか」
「一人だったら怖いじゃない」
「えっ」
積極的に見えて、内心はかなり恐れている。
信じたくない気持ちもあることだろう。
一人だと心細くて、とにかく傍に居た俺を連れてきてしまった。
成り行きながらここまで来てしまうと、協力せざるを得ない。
「それで、どうするんですか」
「わかんない。天見君、訊いて来てよ」
「どうやって訊けばいいんですか。見ず知らずの者がいきなり会社に行って、掛けあってもらえるとも思わないけど」
「そんなの自分で考えてよ」
なんと全てを俺に丸投げしている。
目の前でオロオロとして親指を噛んだり、目がきょろきょろとして挙動不審にうろたえていた。
この調子では、相手に見透かされて、また嘘を上乗せされ丸め込まれるかもしれない。
仕方がない。
俺はその彼の名前を始め、色々と情報を訊き出した。
着いた先はオフィスビルが集まる街の中心部だった。
タクシーは道路の端に寄り、歩道に降りればすぐそばで人がひっきりなしに行き交った。
ざわめく雑踏。
油断のならない緊張感。
ぼやぼやしてると後ろから邪魔だと言われそうに、俺はそこでオタオタとしてしまう。
ノゾミの姉──そういえばまだ名前を聞いてなかった。
声を掛けようにも、なんと呼んでいいのかわからず、俺は躊躇してしまった。
「さあ、行くわよ」
「行くってどこへ」
「彼の会社よ」
聞いた事のある社名が入った前方のビルを指差していた。
「そこに行って何をするんですか」
「確かめるのよ、本当に既婚者なのか」
「なぜそこで、部外者の俺が行かないといけないんですか」
「一人だったら怖いじゃない」
「えっ」
積極的に見えて、内心はかなり恐れている。
信じたくない気持ちもあることだろう。
一人だと心細くて、とにかく傍に居た俺を連れてきてしまった。
成り行きながらここまで来てしまうと、協力せざるを得ない。
「それで、どうするんですか」
「わかんない。天見君、訊いて来てよ」
「どうやって訊けばいいんですか。見ず知らずの者がいきなり会社に行って、掛けあってもらえるとも思わないけど」
「そんなの自分で考えてよ」
なんと全てを俺に丸投げしている。
目の前でオロオロとして親指を噛んだり、目がきょろきょろとして挙動不審にうろたえていた。
この調子では、相手に見透かされて、また嘘を上乗せされ丸め込まれるかもしれない。
仕方がない。
俺はその彼の名前を始め、色々と情報を訊き出した。