先輩、一億円で私と付き合って下さい!
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世間で言われるゴールデンウィークが始まる土曜日までの一週間、ノゾミは俺の邪魔をしたくない理由で顔を出すことはなかった。
急にノゾミの音沙汰がなくなったので、江藤は上手くいっているのか心配そうな口をきいてきたが、裏を返せば、お菓子を持ってこなくなったことが残念でならなくて、様子を探ってるに過ぎない。
ノゾミのケーキの真相を知った今、江藤に当たり前のように食べてほしくないと思ってしまう自分がいた。
江藤の推測通り、材料はいいものだったし、あれは店に出してもおかしくないクオリティだった。
だからこそ、プロのパティシエの指導の下で、元から才能のある若きパティシエの卵が作った本格的なケーキは奴には勿体なすぎる。
ましてやノゾミの家がケーキ屋さんと知られたら、それこそ一緒に店に行こうとなって、あいつなら俺をダシに利用する事だろう。
ノゾミとの接点を少しでも遠ざけ、このことは江藤には絶対に知られてはならいと注意を払った。
だからノゾミの事を聞かれたら、お陰様でラブラブだとのろけてやる。
そう言ってやれば、俺らしからぬ態度に、江藤も意表を突かれて面食らう。
「天見、お前そんな素直なキャラだったか。ノゾミちゃんも隅に置けないな、天見をここまで変えるなんて」
感心しているのか、呆れてるのか、真意はわからないが、少なくとも俺がノゾミを気に入ってることが江藤には驚きみたいだった。
ノゾミを気に入る──
自分で言ってみれば、なんだか違和感があるようで、しっくりくるような気もする。
どちらの感情も併せ持ち、それが一対となっていかにも俺らしいから、自分で笑ってしまう。
素直になれ。
まだまだ油断するな。
自分の両サイドで二つの正反対の心がささやいているようなそんな心境だった。
始まって間もないというのもあるが、俺たちの場合3ヶ月という期限つきだ。
ノゾミは何を思って3ヶ月という期限を設けたのか。
そこに用意などできそうもない1億円をちらつかせて──
その真相がはっきりしない限り、俺はノゾミをこれ以上気に入るのを躊躇してしまう。
色々と巻き込まれ過ぎたせいもあるが、すでにノゾミが傍に居る事が当たり前のようになってきてるから、自分でも訳がわからなくなってきていた。
世間で言われるゴールデンウィークが始まる土曜日までの一週間、ノゾミは俺の邪魔をしたくない理由で顔を出すことはなかった。
急にノゾミの音沙汰がなくなったので、江藤は上手くいっているのか心配そうな口をきいてきたが、裏を返せば、お菓子を持ってこなくなったことが残念でならなくて、様子を探ってるに過ぎない。
ノゾミのケーキの真相を知った今、江藤に当たり前のように食べてほしくないと思ってしまう自分がいた。
江藤の推測通り、材料はいいものだったし、あれは店に出してもおかしくないクオリティだった。
だからこそ、プロのパティシエの指導の下で、元から才能のある若きパティシエの卵が作った本格的なケーキは奴には勿体なすぎる。
ましてやノゾミの家がケーキ屋さんと知られたら、それこそ一緒に店に行こうとなって、あいつなら俺をダシに利用する事だろう。
ノゾミとの接点を少しでも遠ざけ、このことは江藤には絶対に知られてはならいと注意を払った。
だからノゾミの事を聞かれたら、お陰様でラブラブだとのろけてやる。
そう言ってやれば、俺らしからぬ態度に、江藤も意表を突かれて面食らう。
「天見、お前そんな素直なキャラだったか。ノゾミちゃんも隅に置けないな、天見をここまで変えるなんて」
感心しているのか、呆れてるのか、真意はわからないが、少なくとも俺がノゾミを気に入ってることが江藤には驚きみたいだった。
ノゾミを気に入る──
自分で言ってみれば、なんだか違和感があるようで、しっくりくるような気もする。
どちらの感情も併せ持ち、それが一対となっていかにも俺らしいから、自分で笑ってしまう。
素直になれ。
まだまだ油断するな。
自分の両サイドで二つの正反対の心がささやいているようなそんな心境だった。
始まって間もないというのもあるが、俺たちの場合3ヶ月という期限つきだ。
ノゾミは何を思って3ヶ月という期限を設けたのか。
そこに用意などできそうもない1億円をちらつかせて──
その真相がはっきりしない限り、俺はノゾミをこれ以上気に入るのを躊躇してしまう。
色々と巻き込まれ過ぎたせいもあるが、すでにノゾミが傍に居る事が当たり前のようになってきてるから、自分でも訳がわからなくなってきていた。