ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
夏休みが終わった。今までにないくらい濃い夏休みだったなあとひとつひとつを思い出しながら登校していると、後ろから声をかけられた。

「おっはよー!」

元気な声。未央ちゃんだ。
まだ朝、ましてや夏休みが終わったばかりだというのに相変わらず元気だなと感心しつつ振り返る。そこには案の定白い歯を見せて太陽のごとくキラキラと笑っている友人の姿が。長袖を着ている未央ちゃんは何だか新鮮に映った。

「おはよ。元気だねー…」

「だって学校楽しいじゃん」

「いや、ほんとさすがだと思うよ」

「なんか馬鹿にされてる?」


眉間に皺を寄せて表情を作る未央ちゃんを一頻り揶揄う。
気が付けば校門前まで来ていた。


「…んで、どうだった?夏休み」

「んー…楽しかった。なんか、色んなことしたなぁって感じ」

「そっかそっか、良かったね!」


楽しそうに隣を歩く未央ちゃんの質問に答えると、それ以上追及することなくうんうんと頷く。
こういう深く聞かないところ、領域を心得ているところは未央ちゃんの美徳だと常々思う。

私の家庭のことを気にしている、というのもあると思うが。

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