ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら
「随分難しい本読んでるね」

「あ、あぁ…名前知ってるけどそういえば読んだことないなって思って」

「へぇ」

「こう見えて、私文系得意なんだよー!」

「まぁ理系って感じではないよね」

「え、貶してる?」


テンポよく進む会話に二人して笑い合った。


「……そういえばさ、君は、将来したいことはあるの?」


突然の話題に一瞬何を言われたのか分からなかった。
もしかして文系とか理系という話をしたからだろうか。誘拐犯さんは時々本当に単純だよなと思った。

どちらにせよ将来のことなんて一度も、誰にも話したことがなかったので戸惑ってしまう。
ましてやいつかこの部屋を出たその後の話など、考えたくなかった。


「…就職かなって考えてる。まだ分かんないけどね」

「そっか」

< 107 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop